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✍️ Amazon Bedrock Automated Reasoningによる数学的LLM出力検証

ブログ概要(Summary)

Amazon Bedrock Guardrailsの一機能として提供されるAutomated Reasoning checks(自動推論チェック)は、形式論理と数学的検証によりLLM出力のHallucinationを検出する業界初のアプローチである。パターンマッチングではなく論理的推論で検証を行い、最大99%の検証精度を達成する。2024年12月のre:Inventでプレビュー発表、2025年8月に一般提供開始された。

この記事は Zenn記事: LLM出力検証フレームワーク実践:本番運用で99%精度を実現する3層戦略 の深掘りです。

情報源

技術的背景(Technical Background)

LLM出力の事実検証において、従来のアプローチは大きく2種類に分類される:

  1. パターンマッチング型: 知識ベースとの文字列照合やembeddingの類似度比較(例: Contextual Grounding)
  2. LLM-as-Judge型: 別のLLMに判定させる(例: DeepEvalのHallucinationMetric)

これらは確率的な手法であり、偽陰性(見逃し)と偽陽性(誤検知)のトレードオフが避けられない。

Automated Reasoningは第3のアプローチとして、形式論理に基づく決定的な検証を導入する。ドメイン知識をルール(命題論理・述語論理)として符号化し、LLM出力がルールに整合するかを数学的に証明する。

実装アーキテクチャ(Architecture)

検証パイプライン

Automated Reasoningの検証は以下の3ステップで実行される:

ステップ1: ポリシー定義

ドメイン知識を変数とルールで表現する。ルールは内部的に形式論理で表現されるが、ユーザーには自然言語で表示される。

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変数:
  - 名前: employee_leave_days
    型: 整数
    説明: 従業員の年間有給休暇日数

  - 名前: employment_years
    型: 整数
    説明: 勤続年数

ルール:
  - IF employment_years < 5 THEN employee_leave_days = 20
  - IF employment_years >= 5 AND employment_years < 10 THEN employee_leave_days = 25
  - IF employment_years >= 10 THEN employee_leave_days = 30

内部表現(述語論理):

\[\forall e \in \text{Employees}: \text{years}(e) < 5 \Rightarrow \text{leave}(e) = 20\] \[\forall e \in \text{Employees}: 5 \leq \text{years}(e) < 10 \Rightarrow \text{leave}(e) = 25\] \[\forall e \in \text{Employees}: \text{years}(e) \geq 10 \Rightarrow \text{leave}(e) = 30\]

ステップ2: LLM出力の解析

LLMの応答文を命題に分解し、各命題をポリシールールに対して検証する。

ステップ3: 検証結果の返却

各命題について以下のいずれかの判定を返す:

判定意味説明
Valid整合ルールに基づき正しいと証明された
Invalid不整合ルールと矛盾する。修正案を提示
No Data判定不能ルールでカバーされていない

ApplyGuardrail API

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import boto3

bedrock = boto3.client("bedrock-runtime", region_name="us-east-1")

# Automated Reasoningポリシー付きGuardrailの適用
response = bedrock.apply_guardrail(
    guardrailIdentifier="guardrail-abc123",
    guardrailVersion="1",
    source="OUTPUT",
    content=[
        {
            "text": {
                "text": "勤続3年の従業員の有給休暇は25日です。"
            }
        }
    ],
)

# 結果の確認
for assessment in response["assessments"]:
    for finding in assessment.get("automatedReasoningPolicy", {}).get("findings", []):
        print(f"Status: {finding['status']}")  # "INVALID"
        print(f"Suggestion: {finding['suggestion']}")
        # → "勤続3年の場合、有給休暇は20日です"

パフォーマンス最適化(Performance)

検証精度

AWSの公式ベンチマークでは以下の精度が報告されている:

メトリクスパターンマッチングLLM-as-JudgeAutomated Reasoning
検証精度75-85%80-90%99%
偽陽性率15-25%10-15%<1%
レイテンシ50ms500-2000ms200-500ms

コスト構造

Automated Reasoningの利用コストはBedrock Guardrailsの料金に含まれる。ポリシー検証は推論呼び出しとは別に課金され、1回の検証あたり約$0.001-0.01(ポリシーの複雑度に依存)。

スケーリング

  • ルール数: 数百〜数千ルールまでスケール可能
  • 並列検証: 複数の命題を並列に検証
  • キャッシング: 同一命題の再検証はキャッシュから返却

運用での学び(Production Lessons)

適用に向いているケース

  • HR/法務ポリシー: 規程・規則に基づく回答の検証
  • 金融/コンプライアンス: 規制要件への準拠確認
  • 製品情報: 仕様・価格情報の正確性検証

適用に向いていないケース

  • オープンドメイン: ルール化が困難な一般的な事実検証
  • 創造的コンテンツ: 正解が一意に定まらないタスク
  • プロンプトインジェクション防御: 入力の悪意は検出しない(別途対策が必要)

段階的導入戦略

  1. 小規模PoC: 10-20ルールのポリシーで効果検証
  2. ルール拡張: ドメインエキスパートとルール追加
  3. 本番統合: ApplyGuardrail APIをLLMパイプラインに組み込み
  4. モニタリング: Invalid/No Data判定の割合を監視し、ルールのカバレッジを改善

学術研究との関連(Academic Connection)

Automated Reasoningの基盤技術は、形式手法(Formal Methods)とSAT/SMTソルバーに由来する。AWS内部では、S2N(s2n-tls)やZelkova(IAMポリシー分析)などで長年使われてきた技術を、LLM出力検証に応用したものである。

学術的には以下の研究と関連する:

  • Certified Reasoning (Poesia et al., 2024): 形式検証とLLMの統合
  • LLMSAT (Ye et al., 2024): LLM出力のSATソルバーによる検証

まとめと実践への示唆

Amazon Bedrock Automated Reasoning checksは、形式論理による決定的な検証という新しいアプローチでLLM出力のHallucination検出に取り組んでいる。99%の検証精度は、Zenn記事で紹介された3層戦略のSemantic Validation層を補完する強力なツールである。特にルール化が可能なドメイン(HR、金融、法務等)では、パターンマッチングやLLM-as-Judgeを超える信頼性を提供する。

参考文献

この投稿は CC BY 4.0 でライセンスされています。

NeurIPS 2025論文解説: Multi-Agent Collaboration via Evolving Orchestration — 強化学習で進化する操り人形師パラダイム

Microsoft Research解説: 低ビット量子化がエッジデバイスでのLLM展開を実現する — T-MAC・LUT Tensor Core・Ladderの技術全容